小規模事業者の【DX】への取り組み方法|DXの概要と必要性

、小規模事業者やまちの小売店にとって
・DXとは何か、
・DXで一体なにが変わるのか、
・それほど大切なことなのか、
・どのような方法で進めて行けばいいのか

などについて、基本的なことをまとめました。

国や各自治体などの行政もあらゆる分野において、DX化についてその普及に力を入れています。

はたしてDXは自分の店にとってどれほどの効果をもたらすのか
・大企業だけのものなのではないのか
・自分の店に関係があるのか
・何をすればいいのか

ここでは、DXとは何なのかなどを解説しています。

1 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

まず、経済産業省が定義している“DX”を見てみます。

DXとは

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

と定義しています。

キーワードは、

 ①データとデジタル技術を活用する
 ②製品やサービス、ビジネスモデルを変革する
 ③組織や組織文化も「変革」する
その結果、競争上の優位性を確立することができる

となります。

明らかに大企業向けの文言です。

これだけを見ると非常に曖昧で、小規模事業者には具体的に何をすればいいのかがよくわかりません。

唐突にDXが出現してきた背景には、次の2点があるといわれています。

①経済産業省が2018年に「今後日本においてDXが進まない場合、2025年以降に年間最大12兆円もの経済損失が生じる可能性がある」とのレポート(「2025年の崖」)を発表した。

②2020年からのコロナ禍により、世の中の様々な動きが一気にデジタル化に向けて動き出した。

この二つことで一気にDX推進の機運が高まったと言われています。

2 小規模事業者もデジタル化から逃れない

コロナ禍を契機にまちのお店や小規模事業者にも経営面で大きな変化が起きています。
密や対面を避ける動きです。

 〇対面販売の他にネットショップに参入
 〇決済や見積書などは紙ベースからデータでのやり取り
 〇オンライン会議やリモートによる業務

また、国や行政への申請などは、電子申請が普通になり、これまで必須であったハンコは不要になっています。

これまで、身近な存在であったまちのレコード店や本屋さんが急減しています。
インターネットによるストリーミングサービスの登場や様々な情報が即座に得られることなどから、人々はお店に行かなくなったのです。

足繁く通ってきてくれていたお客様もインターネットの世界やデジタル化の日常に慣れ、その便利さから逃れなくなっているのです。

多くの人がいつも肌身離さず持っているスマホとインターネットが人々の生活様式とビジネスモデルを変えていったのです。

お客様が新たなネット社会の体験をした以上、事業者の方も変わって行かなければ顧客への新しい価値を提供できなくなり、埋もれてしまうかもしれません。

3 中小企業、小規模事業者はDXへの取り組みが遅れており、意欲も低い

総務省が発表した令和3年の情報通信白書によれば、日本の約6割の企業がDXについて「実施していない、今後も予定なし」と回答しており、そのうち、大企業では約4割、中小企業に限っては約7割となっています。

さらに、東京23区では、大企業の5割以上(52.2%)がすでに何らかの取り組みをスタートしているのに対し、中小企業では20%強でしかありません。

地方都市の中小企業に至っては、DXに取り組んでいる企業は9.4%と1割にも満たない結果となっています。

総じて、日本の中小企業は、DXへの取り組みが遅れており、意欲も低いということが言えます。

小規模事業者のDXへの取り組みが進まないのは事業者全般におそらく次のような意識があるためだろうと思われます。

 ・そもそもDXて何なのか
 ・大企業向けのものだと思う
 ・投資費用がかかりそう
 ・どんなメリットがあるのか
 ・何をしたらいいのか
 ・IT、デジタルを使いこなせる人材がいない

小規模事業者にDXを普及させるためには上記の6つの疑問を解消しなければなりません。

4 DXへの取り組みの基本

経済産業省 「デジタルガバナンスコード 実践の手引き」(要約版)では、DX推進について、経営者が考えるべきこととして、次の4点を挙げています。

-経済産業省 デジタルガバナンスコード 実践の手引き(要約版)より-

上図の4点のポイントのうち、小規模事業者は当面、最初の2点を意識して「業務の流れを効率化し、業績をアップする!」ことを念頭に置いてDXに取り組めば取り組みやすいのではないでしょうか。

あとの2点はある程度DXが進み、新しい課題克服の必要性や次の目標を設定すべき時に着目しなければならないことになります。

小規模事業者が当面意識して取り組まなければならないこととして、

①業務の効率化による生産性向上

様々な業務をアナログからデジタルに置き換え、生産性を向上させるというものです。
日常業務や経営体制の観点から取り組むものになります。

②顧客に対しての販売方法や販売機会の拡大による顧客満足度の向上

多くの人々の日常におけるや活動が急激にデジタル領域に及んでいることに対し、お客様に合わせて、事業者もマーケティングや営業の観点から、デジタル領域の対応をして行く必要があるのです。

この2点を意識してDXに取り組んで行くことで、DXへの取り組みがスムーズに行うことができます。

ここで、小規模事業者がDXを進める上で、具体的なイメージとしてとらえやすい例として川口商工会議所のホームページから引用させていただきます。

-川口商工会議所 「デジタル支援事業」より-

アナログ作業であったレベル0からパソコンやソフトを導入し、レベル2での効率化までは、それ相応のハードとソフトを導入すればできます。

レベル3における対顧客、社内業務の高効率化こそが本格的なDX化ということになります。

大企業に比べて資本力に大きな差がある小規模事業者にとって、まずは身近な「業務の流れを効率化し、業績をアップする!」を目標に掲げ、DXに取り組みはじめます。

その後、レベル3実施の機運が高まりDXの拡大が可能になれば、自社、自店のDXが取引先や顧客を巻き込む形での新たな高付加価値を生むことにつながり、本来のDX推進の目的を達成したことになります。

いずれにしても小規模事業者におけるDXの取り組みは、自社、自店の課題を見つけ、その改善のための手段としてDXを推進するという明確な目的意識を従業員一同が持つことが重要です。

5 DX推進のプロセス

経済産業省「デジタルガバナンスコード 実践の手引き」(要約版)では、DX推進について、経営者が考えるべきこととして、次の4点を挙げています。

大手企業に限らず小規模事業者にとってもDXを推進する上で共通の事項となります。

-経済産業省 デジタルガバナンスコード 実践の手引き(要約版)より-

これによりますと、DX実現に向けたプロセスは、

 (1)意思決定
 (2)全体構想、意識改革
 (3)本格推進
 (4)DX拡大・実現

の4段階で進めることとしています。

DX推進のプロセスを順番に見てゆきます。

(1) 意思決定
①自社、自店がDXに取り組むということを決定し、社員や従業員に通達
②経営者自身が主体となり、自社、自店の経営理念に基づくビジョンや戦略を策定
③自社、自店内からDX担当者を決め、必要に応じて専門家などの人員派遣を外部に依頼

(2) 全体構想・意識改革
①自社、自店でDXにより具体的に何を変えてゆくのかを検討
・経営方法なのか、日常業務の流れなのか、製品、商品に関することなのか
・小規模事業者にとって、最も取り掛かりやすいのは「日常業務の流れ」である。
②自社、自店全体がDX推進に向けて自発的にDX推進のための行動に移せるよう全員が意識を共有
・従業員一人ひとりがDXに取り組むことを自覚することが重要 

(3) 本格推進
①ハード、ソフト両面の準備
・これまで蓄積してきたアナログ的なデータや資料をデジタル化できるように準備
②価値を産むデータ活用やシステム構築を検討、実施 
・使用するデジタル用ツールの選定
・セキュリティー対策
・デジタル用ツールの選定や後のセキュリティー対策などに精通している人材が必要
③デジタル化を進めてゆく過程で得られた知見の蓄積
・失敗例も含めて後の段階で生かせるよう積み上げて社内で蓄積

(4) DX拡大・実現
①顧客、サプライチェーンへの影響確認
・自社、自店だけではなく、製造元、仕入先、顧客、また同業者などにどのような影響を及ぼしているかを確認しながら進めてゆく
・それぞれに効果が現れている場合はDX化が成功
・半永久的に継続することを視野に入れ、試行錯誤しながら取り組んで行く 

以上が大手企業、小規模事業者を含めた中小企業全体における共通したDXの進め方になります。

小規模事業者においては、まず、現状の日常業務をデジタル化するところから取り掛かり、その後進捗状況を見ながら自社、自店の経営方法などの変革も視野に入れてステップアップしていくのがいいでしょう。

DXを推進するためのツール

DXを推進しようとすれば最新のデジタル用ツールを導入しなければなりません。

これまでは、PC、サーバーなどのハードやソフトウエアーの整備・メンテナンスにそれなりの初期費用と保守費に相応のコストがかかっていました。

しかし、現代ではクラウドによるネットワーク経由で様々なサービスが提供されるようになりました。

クラウドサービスを活用することにより、自前のサーバーを設置する必要がなくなり、必要な時にソフトウエアーを含めて必要なものだけ利用することができることから、必要最低限のコストで済みます。

デジタル用ツールとは、これまで紙文書やExcelなどで人手と時間をかけて行っていた業務をシステム上で行うことにより、「業務効率化」「売上拡大」「コスト削減」などを実現可能なソフトウェアツールです。

下記に小規模事業者が使用しやすいデジタル用ツールを紹介します。

○ビジネスチャット
社内外の関係者との業務連絡(電話、会議、訪問など)を効率化するコミュニケーションツール
・社内外の関係者間の業務連絡に有効
・リモートワークへの対応が可能

○経費精算システム
交通費/交際費/出張費などの精算をデジタル化するシステム
・経費精算業務に係る手間や人件費の削減

○帳票発行システム
商品・サービス・顧客種別などに応じて、帳票(見積書・請求書・申込書・発注書など)を自動出力するシステム
・帳票作成~送付に至るまでの時間を削減

勤怠管理システム
社員・パート・アルバイト等の出退勤の時間把握や労働時間の管理をサポートするシステム
・勤怠管理に係る業務の効率化

このシステムについて、分かりやすい例として

クラウド勤怠管理【スマレジ・タイムカード】

○電子稟議システム
社内稟議の起案・回付・承認(決裁)といった一連のフローを、パソコンやスマホなどから確認、実行するシステム
・稟議承認までのスピードアップと回付、承認状況の常時把握

○電子契約システム
契約書への押印・署名、締結などの作業を、インターネット上で行えるシステム
・押印や郵送作業が不要なため、迅速な契約締結が可能

OCRツール
紙面に印刷された文字を、パソコンなどで読み取れるテキストデータへ変換するツール
・印刷された文字のテキストデータ化が可能

○オンライン会議システム
インターネットを介しての会議が行えるシステム
・会議のための移動時間が不要
・遠方の見込み顧客へのアプローチが可能 

以上が「業務効率化」「売上拡大」「コスト削減」などを実現できるシステムとツールですが、自社、自店が行おうとするデジタル化に合ったものを選定することが大切です.

まずは従業員が使いやすい簡単なツールなど、なるべくスムーズに導入できるデジタルツールから導入するのがいいでしょう。

6 最近のDX実施の例

◆バーチャル(VR)商店街

バーチャル(VR)とは、いながらにしてパソコンやスマホで商店街の様子を全方位にわたって見ることができるシステムです。

お客さんは、24時間365日お店で買い物をするように商店街を歩くような気分で、お店や商品を見ることができ、気になる店が見つかればその店を選んで表示されるURLをクリックし、食料品店の商品や土産物などを購入できるページに進むというものです。

商店街以外の店舗でも店内のあらゆる商品を見て回れることができるVRを活用したバーチャル店舗も出現しており、商談ツールとしての活用や新規顧客の獲得などを実現しています。

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◆デジタルサイネージの活用

デジタルサイネージとは、駅、ショッピングセンター、電車の中、公共の施設など、あらゆる場所で、ディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信する電子看板のことです。

商店街のイベント情報・案内、天気予報、行政からのお知らせなどを大小のディスプレイにより静止画だけではなく、動画を音声とともに表示するものです。従来の紙や看板・掲示板などの媒体に比べて情報伝達の効果が高まります。

デジタルサイネージを商店街の入口などにおいて、商店街の情報や案内を動画や音声により発信することにより商店街への集客力は格段にアップします。

商店街の他にもデパート、ショッピングセンターなどでも多く活用されています。

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◆LINE公式アカウントの活用

国内最大のコミュニケーションアプリである「LINE」の式アカウント設定し、友だち追加してくれたユーザーに対し、商店街のイベント、加盟店案内などの様々な情報を発信します。

また、チャット機能によるコミュニケーションツールとしても活用できることから、商店街のファンを増やし、集客効果を高めることができます。    

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◆POSレジの活用

POSレジとは、通常のレジ機能の他にPOSシステムと呼ばれる機能により売上・在庫分析機能や顧客管理機能をもったレジのことです。

これを導入することにより、日々の商品ごとの売上がリアルタイムで確認できるほか、仕入れのタイミングを的確に行うことができ、在庫切れでお客様に迷惑をかけることがなくなります。

また、個々の顧客の来店頻度や購入履歴を把握・管理することも可能で、売り上げた商品別データと顧客データから来店時間、季節、曜日、年代などの傾向がわかり、仕入れ、在庫管理を適切に行うことができます。

これまでは、デパート、大型ショッピングセンター、スーパーなどで使われていましたが、最近ではコンビニをはじめ、まちの小売店での導入も増えてきています。

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◆キャッシュレス対応

我が国ののキャッシュレス決済比率は諸外国に比べて低く、まだまだ現金支払いが多いのが現状ですが、

経済産業省では、キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%まで上昇させることを目指し、キャッシュレス決済推進への後押しもあり、急速に普及が進んでいます。

キャッシュレス決済の方法も、これまでの主流であったクレジットカードの他にデビットカード、電子マネー(交通系、流通系)、コード決済(バーコード、QRコード)の他にモバイル決済と呼ばれるスマホによる決済やアプリ決済も登場しています。

また、端末機はこれまでは据え置き型のCAT端末が主流であったが、近頃では決済方法の多様化などに伴い、1つの端末であらゆるキャッシュレス決済に対応できるマルチ決済端末機が急速に増えつつあります。

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        ⇒ キャッシュレス決済をリードするマルチ決済端末

以上が現在商店街やまちの小売店で行われているデジタル技術を活用したDXの例です。
これらの他にも様々な実用例がありますが、自社や自店の業種、営業規模、資本力などに照らし合わせて出来るところから進めてゆくことがDX化への早道になります。

7 まとめ

DXを進める手法は大企業と小規模事業者では違ってきます。

小規模事業者のDXは、まず「業務の流れを効率化し、業績をアップする!」ことを目的に始めればいいと書きました。

しかし、それだけでは、ただ単に業務の内容についてデジタル化を図っただけに過ぎません。

デジタル化により業務の効率化が進み、自らの業績がアップさせることで、それが後になって取引先や顧客などを巻き込む形で新たな高付加価値を生む好循環が生まれてくるのです。

そこで初めてDX本来の目的を達成したことになります。

小規模事業者の経営者は、デジタルやAIの技術を使ってとりあえず何かをやるという自社、自店本位の考え方ではなく、デジタル化は上記のDX本来の目的である社会全体に好循環を産むための手段であるという意識持ち、DXに取り組んでいく必要があります。

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