「小規模事業者持続化補助金」採択のポイント/採択されるためには何が必要か

「小規模事業者持続化補助金」は、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とし、持続的な経営に向けた経営計画に基づく販路開拓等の取組を国が支援するもので、各地域の商工会議所、商工会が受付窓口になり、毎年複数回の公募が行われます。
小規模事業者持続化補助金は、まちの小売店など小規模商業事業者に限って言えば、
 ・店舗のリフォーム費用
 ・機械の導入費用
 ・ホームページの制作
  ・チラシの配布
  ・展示会の出展

といった販売促進や集客のための店舗改装などに使える補助金で、幅広い業種・用途に活用することができます。
それだけに応募者も多く、申請すればだれでも補助金が交付されるというものではなく、何段階かの審査を通過することが必要で、最終的に採択される応募者は決して多くはありません。

本記事では、「小規模事業者持続化補助金」に応募するに当たっての注意点や申請書作成時におけるポイントなどを「補助金ポータルサイト」からピックアップして紹介します。

小規模事業者持続化補助金の内容については次のリンクから確認することができます。

    小規模事業者持続化補助金について ⇒ 小規模事業者持続化補助金の内容

1 採択率はどの程度なのか

「小規模事業者持続化補助金」は対象となる小規模事業者は気軽に応募できますが、だれでも採択されるわけではなく、最近の採択率は低下傾向にあり、特に前回の第16回公募の採択率は37.2%と、これまでで最も低い水準となりました。

補助金検索サイト「補助金ポータル」の資料から引用すると、下表のようになります。

この推移表を見ると、第6回以降は60%前後で推移していましたが、第15回で41.8%に急落し、第16回では37.2%にまで低下しています。第15回公募から、電子申請システムで「経営計画書」と「補助事業計画書」を入力する方式に変更されたことに加え、第16回公募のスケジュールが短期間だったことも、採択率の低下に影響を与えたとものと考えられます。

 商工会議所などでは、小規模事業者持続化補助金は中小企業や小規模事業者にとって、幅広い範囲で非常に使いやすい補助金であるとアナウンスしていますが、最近の採択率をみるとかなりの「狭き門」であることが窺われます。

この狭き門を突破して採択されるためには、どのようなポイントがあるのでしょうか。

2 採択されるためのポイント

小規模事業者持続化補助金の審査は、第三者の有識者による審査委員会が非公開で実施します。書類の完成度が採択率に大きく影響するため、審査基準を理解することが重要です。

直近の第16回の公募要領を参考に、審査の観点と対応を紹介します。

審査の基準と対応

審査は大きく分けて、次の3つの観点から行われます。 

➀基礎審査
 必要書類の提出や要件適合の確認

➁計画審査
 事業計画の有効性や実現可能性の評価

➂加点審査
政策的観点からの優遇措置

以下にそれぞれの審査に対する対応など注意点を上げます。

基礎審査への準備
応募申請に際してのごく基本的な対応で、これが不備であるとこれ以降の審査対象外となります。
事前に十分点検するなどの事前準備をしっかりしておくことで、採択の可能性が高まります。 

◯提出必要書類の提出要件に対して不備などがないかどうか
・必要な提出書類がすべて揃っていることと、記入漏れ・誤りがないかを事前に十分点検して
  おく

◯補助対象者・補助事業・対象経費の要件を満たしているかどうか
・事業の内容が補助金の目的や要件に合致していることが必要

◯事業を遂行する能力があるかどうか
・事業を推古いうして行く能力があるかどうか、継続的な経営が可能かどうか

◯小規模事業者が主体的に取り組む内容であるかどうか
・単なる外注任せでないこと

◆計画審査への対応
計画審査では、事業計画の具体性や実現可能性について次の観点から審査が行われます。
事業計画書には、数値データや具体例を交えて、実現可能なプランを明確に記述することで、審査の評価を高めることができます。補助金の趣旨に沿った内容であることを意識しながら、説得力のある計画を作成することが必要です。

◯経営状況の分析が正しく行われているか
・自社の経営状況や、自社製品の強みを適切に把握しているか

◯経営方針・目標等が適切に捉えられているか
 ・自社の強みを踏まえたプランで対象とする市場や商圏の特性を把握しているか

◯補助事業計画の有効性があるか
・実現可能性が高いものとなっているか
・創意工夫やITを有効に活用する取組が見られるか

◯積算に透明性・適切性が確保されているか
・補助対象経費が明確で、事業実施に必要なものとなっているか

◆加点審査への対応
小規模事業者持続化補助金では、政策の重点施策に合致する事業に対し、次の加点が行われます。

◯重点政策加点(1つ選択可能)
・赤字賃上げ加点
赤字企業が賃上げ引上げ枠に申請する場合
・事業環境変化加点
原材料費高騰などの影響を受けた事業者
・東日本大震災加点
東京電力福島第一原子力発電所の影響を受け、引き続き厳しい事業環境下にある事業者
・くるみん・えるぼし加点
子育て,女性活躍推進の認定企業)

 ◯政策加点(1つ選択可能)
政策的観点からの加点を活用することも採択率向上のポイントになります。
該当する加点項目がある場合は、適切に申請することで採択の可能性を広げることができま
す。
  ・賃上げ加点(事業終了時点で事業場内最低賃金が申請時の地域別最低賃金より+30円以上
となる賃上げを行う
・パワーアップ型加点
地域資源型・地域コミュニティ型の類型に即した事業計画を策定している場合

・経営力向上計画加点
経営力向上計画の認定を受けている場合
・事業承継加点
代表者が60歳以上で後継者が補助事業を実施する場合
  ・過疎地域加点 
過疎地域で事業を行う場合

3 まとめ

小規模事業者持続化補助金は、まちの小売店など、身近なことに使える活用しやすい補助金ですが、全国規模の補助金制度であるところから応募者も多く、最近では採択率も下降傾向にあります。
申請者は気軽に応募しても、簡単には採択されません。
提出書類の不備などは、その時点で以降の審査対象外になってしまうので、事前にしっかり確認しておく必要があります。

次の審査のポイントは、申請者が行おうとする事業が、この補助金の目的に合致した事業効果が得られるかどうです。それには、自社・自店の経営状況を正確に把握した上での事業計画書であることです。

さらに、採択の可能性を高めるためには、加点項目があるかどうかもポイントになります。
できれば、経営力向上計画の認定は受けておきたいものです。

なお、現時点における小規模事業者持続化補助金の公募スケジュールは以下になります。

   □第17回公募:2025年3月開始 → 6月締切(公募期間:約3か月)
   □第18回公募:2025年9月開始 → 12月締切(公募期間:約3か月)
   □第19回公募:2026年1月開始 → 3月締切