やりがいよりも給料と待遇!/人材確保における企業と就活生の力関係が逆転

人手不足が叫ばれている現代において、企業の将来を担う若手の人材確保に向けての現状について過日,毎日新聞に就活生と企業側とのそれぞれの思いのギャップの違いについて赤裸々なリポートが掲載されていました。

ここでは、現代の就活生が求める働くことへの価値観に対する採用する側である企業の困惑などについてリポートをもとにまとめました。

ー以下、毎日新聞から一部引用

1 「やりがい」よりも「待遇」

企業の採用担当者は嘆いています。
会社としては、
・仕事にやりがいと誇りを感じる
・仕事に人生を賭ける

このような人材を求めようとしているが、受ける方は一向にこれになびかないようです。

就職支援会社「キャリタス」が2025年春に卒業予定の大学生や大学院生に就職先企業を選ぶ際に重視する点を訊いたところ
・「給与、待遇が良い」が45%でトップ、 10年前の調査では24%の6位でした。
・「仕事内容が魅力的」は10年前は35%の2位だったのが今では18%の12位に交代しています。

●「やりがいなんてとんでもない!」
●給料は25万円以上ほしい

残業がない
自由に有給休暇がとれる

就活を行っている若者にこのような給与・待遇を第一に考えている者が多くなっているようです。

急激な円安、どんどん上がる物価、負担の重くなる税金や社会保険料など、決して明るくない将来をシビアに感じ取り、少しでも給料がいい会社に入って、責任のある仕事は出来る人に任せて余暇を充分楽しもうという考えが透けて見えます。

このような流れの中での人材確保のためのキーワードは、賃金と労働時間など待遇になってきています。

2 初任給のアップは必須

仕事のやりがいより待遇を優先する若者の求職志向に応え、優秀な人材確保の手っ取り早い方法が初任給の大幅アップです。

今春の初任給アップの状況は、大手では
三菱商事が2万円増の32万5000円、日本製鉄が4万1000円増の26万5000円、人手不足が深刻な外食業界の「すき家」では2万8000円増の27万8000円にそれぞれ引き上げています。
銀行業界においては、メガバンクとの人材獲得競争を勝ち抜けるために、横浜銀行、京都銀行などの地銀はともに26万円に引き上げメガバンクと肩を並べる形になっています。

もはや、将来を担う人材を確保するための方法として初任給の大幅アップは業界を問わず必須になった感がします。

3 人材確保戦線で中小企業は苦戦

人手不足の深刻化は特に中小企業において顕著で、 日本商工会議所の調査によりますと、中小企業における今春の新卒採用状況は計画通りの人数を確保できたのは26%で4社に1社、1人も採用できなかった企業は30パーセントに上っています。

中小企業の人材確保については、大手企業のように給与・待遇の面での当面の対応として初任給の大幅アップが出来るかどうかにかかっています。

初任給アップや賃上げが容易にできない中小企業は、この春の人材獲得競争から脱落し、事業所やお店の将来像が描けなくなり、最悪「人手不足倒産」に陥る可能性を秘めています。

今後、中小企業の経営者は、新規の人材確保が困難な場合は、積極的に現有従業員の定年延長、熟練者の再雇用、中途採用などを進めてゆく必要がありそうです。

4 まとめ

人口減少と高齢者の急増で働き手の数が2019年の6700万人を境に減少局面に入るとみられています。

加えて、「やりがいより待遇!」を最優先する最近の就活を行う若者を相手に、「仕事のやりがい」や「仕事はが人生」などの精神論を説いても余暇を趣味に費やし、友達との交流を第一に考える若者には見向きもされないのが現状です。

  このような求職状況の中で、大手企業のように大幅な賃上げや労働条件の緩和などの自由度が極めて低い中小企業にとって、若い優秀な人材の確保は厳しいものがあり、人材難のための倒産の憂き目にあう中小企業が今後多く出てくる恐れがあります。
 中小企業の経営者は生き残りをかけて人材確保の方法を模索していかなければならない時代になってきているのです。