現在、国や自治体などから多くの補助金の公募が行われています。
この中には、規模の大きなものから小さいものまで様々なものがあります。
しかし、これらの中でまちの小売店など小規模事業者が活用できるものは案外限られています。
今回、ご紹介する「小規模事業者持続化補助金」には、店舗の改装や広告掲載など、まちの小売店にとって身近なものから活用できる補助金制度になっています。
小規模事業者持続化補助金は年に3~4回程度の公募が行われ、応募事業者は公募期間にあわせて応募することができます。
小規模事業者持続化補助金の公募対象として、商業者の他にサービス業、製造業等も対象になりますが、ここでは、主に商業者を対象にした「小規模事業者持続化補助金」の制度内容、活用の方法などについてその概要を解説します。
目次
1 小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者持続化補助金とは国(中小企業庁)が設けた補助金制度で、※1小規模事業者等が、持続的な経営に向けた経営計画に基づく、販路開拓等の取組や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化の取組を支援するため、経費の一部を補助するもので、小規模事業者等が※2経営計画を自ら策定し、商工会議所・商工会の支援を受けながら取り組む補助金制度です。
※1小規模事業者とは
商業・サービス業にあっては、従業員数が5人以下の事業者をいいます。
(サービス業のうち宿泊業・娯楽業の場合は、20人以下)
※2経営計画とは
自店の経営状況の課題等を洗い出し、将来の目標やビジョンを明確にし、それを実現させるための経営戦略や行動計画などを具体的に示したものです。
以下に解説する内容については、次のリンクにより概要をまとめています。
●補助金事務局ホームページ
⇒https://r3.jizokukahojokin.info/
●ガイドブック
⇒r3i_guidebook_ver8.pdf (jizokukahojokin.info)
●公募要領
⇒https://r3.jizokukahojokin.info/doc/r3i_koubo_ver9.pdf
●申請書等様式
⇒https://r3.jizokukahojokin.info/doc/r3i_youshiki_13.pdf
注)上記リンクは、公募期間より変更が行われる場合があります。
2 補助対象となる経費
小規模事業者持続化補助金制度では、小規模事業者の事業所等を維持・発展させてゆくために必要な多くの経費が対象になりますが、小売事業者に限ってその項目を上げると次の経費が上げられます。
①新しいサービスなどを紹介するチラシ作成・配布・看板等の設置
②ウエブサイトやECサイト等の開発、構築、更新、改修などに要する費用
③展示会・商談会の出展料等
④店舗改装など自社では実施困難な業務の委託
どれも、非常に身近なもので、日常的に必要とするものばかりです。
3 補助金と類型
小規模事業者持続化補助金は、【通常枠】としての基本補助額として次の補助金制度が設けられています。
◇補助率 2/3
◇補助上限額 50万円
上記の「通常枠」とは別枠として、
◇賃金引き上げ枠
◇卒業枠
◇後継者支援枠
◇創業枠
が設けられており、通常の規準補助金に有利な上積み額が設けられています。
それぞれの内容は次の通りです。
●【賃金引き上げ枠】
最低賃金を地域別最低賃金よりプラス50円以上とした店舗や事業所
・補助上限額が200万円
・赤字の店舗、事業者は補助率3/4
●【卒業枠】
小規模事業者として定義する従業員員数を超えて規模を拡大する店舗、事業者等
・補助上限額が200万円
●【後継者支援枠】
アトツギ甲子園のファイナリスト等になった事業者
・補助上限額が200万円
※アトツギ甲子園とは:
先代経営者がこれまでに培ってきた経営資源を活かした新規事業アイデアを競い合う中小企業庁が開催するピッチイベント
⇒ https://atotsugi-koshien.go.jp/
●【創業枠】
過去3年以内に※「特定支援事業」による支援を受け創業した事業者
・補助上限額を200万円に引き上げ
※「特定支援事業」とは
これから会社を創業する方、もしくは操業して間もない方に対して、国から認定を受けた自治体が支援する事業のこと
⇒ https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/2022/220624sogyo_nintei.html
これらの他に
●インボイス特例の要件を満たす場合は、上記の補助上限額にさらに50万円が上乗せされます。
※「インボイス特例の適用要件」とは
免税事業者が適格請求書発行事業者への転換に伴う事業環境変化に対応することに対し政策支援をするため、2021 年 9 月 30 日から 2023 年 9 月 30 日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった又は免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者が該当します
以上をまとめたものが次表です。
4 補助金交付申請から採択まで
小規模事業者持続化補助金の申請から採択されるまでの流れは次のようになります。
◇まずは地域の商工会議所、商工会へ
小規模事業者持続化補助金は、商工会議所・商工会の支援を直接受けながら取り組む事業であることから、商工会議所・商工会からのアドバイス・指導を受け商工会議所・商工会「事業支援計画書」の交付を受けた後でないと申請者独自での申請を行うことはできません。
(1)事前相談
申請書を作成する前に必ず次の事項について事前確認を行います。
・実施しようとしている事業が申請要件に適合しているか
・補助対象経費の確認
・申請書類、添付資料の確認
(2)経営計画書・補助事業計画書作成
商工会議所・商工会のアドバイス・指導、指示に従い経営計画書・補助事業計画書の(案)を作成します。
※応募時提出資料の詳細については、ガイドブックを参照して下さい
応募時提出書類作成のポイントは、経営計画作成で、少なくとも自店・自社についての現状を把握した上での将来計画など次の項目が盛り込まれていなくてはなりません。
・経営状況の把握と課題
・自社、自店の強み
・市場(商圏)を踏まえたうえでの今後の目標とその達成のためのプラン
(3)応募時書類の確認
商工会議所・商工会は申請者から提出のあった応募時提出書類を確認し修正・追加資料の提出などの指示を行います。
(4)事業支援計画書発行
応募時提出書類の確認が済み問題がなければ商工会議所・商工会は申請者に対し「事業支援計画書」を発行します。
(5)申請図書類
応募時の作成が必要な申請図書類はガイドブックによると次の様になります。
以下に<通常枠の場合>の申請図書類を列記します。
〇小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書(様式1)[原本]
※電子申請の場合は不要
〇 経営計画書兼補助事業計画書①(様式2)[原本]
〇 補助事業計画書②(様式3)[原本]
〇 事業支援計画書(様式4)[原本]
〇補助金交付申請書(様式5)[原本]
※郵送による申請の場合に必要
〇 宣誓・同意書(様式6)[原本]
〇電子媒体(様式1、様式2、様式3、様式5、様式6、(様式7、様式8、様式9))
※郵送による申請の場合は必要
〇 貸借対照表および損益計算書(直近1期分)[写し]
〇 株主名簿[写し]
※該当者のみ
〇直近の確定申告書【第一表及び第二表及び収支内訳書(1・2面)または所得税青色申告決算書(1~4面)】(税務署受付印のあるもの)または開業届(税務署受付印の あるもの)[写し]
〇 貸借対照表および活動計算書(直近1期分)[写し]
〇現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書(申請書の提出日から3か月
以内の日付のもの)[原本]
〇法人税確定申告書(別表一 (受付印のある用紙)および別表四(所得の簡易計算))(直近1期分)[写し]
申請書等の各様式はそれぞれのリンクをご覧ください
上記の他に、賃金引き上げ枠、卒業枠、創業枠などの別枠の申請の場合はそれぞれに必要な書類が別途定められており、申請者が個人、法人、NPOによっても必要書類が変わってくるので詳しくはガイドブックを参照してください。
(6)補助金交付申請書提出
商工会議所・商工会から申請者に「事業支援計画書」を交付されれば、申請者は「事業支援計画書」と応募時提出資料をに商工会議所・商工会に郵送しますが、今後は電子申請による申請が主流になる動きがあります。
―電子申請―
電子申請に際しては、補助金申請システム(名称:Jグランツ)の利用になります。
Jグランツを利用するにはGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。
電子申請の詳細については、次のリンクをご覧ください。
⇒ https://r3.jizokukahojokin.info/doc/r3i_jgr_tebiki13.pdf
(7) 審査
商工会議所、商工会の補助金事務局では提出された補助金交付申請書について審査を行います。
審査項目はガイドブックによると次のようになります。
・自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか。
・経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。
・経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。
・補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。
・補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。
・補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。
・補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。
・補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。
・事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。
審査が終わり提出図書類、審査要件が全て満たされていても必ずしも採択されるわけではなく、小規模事業者持続化補助金は全国規模の公募補助事業であり、評価の高い順からの採択になります。
高評価を得るための方法として次の加点項目が用意されています。
(8) 採択・交付決定
審査終了後、採択案件を補助金事務局ホームページに公表の上、商工会議所、商工会の補助金事務局から採択の結果が通知されます。
採択決定者については、商工会議所、商工会の補助金事務局に提出した「補助金交付申請書」を確認し、不備等がなければ、商工会議所、商工会の補助金事務局から「交付決定通知書」が通知されます。
5 事業実施から実績報告まで
事業実施から事業完了、実績報告までの流れは次のようになります。
(1) 補助事業の実施
「交付決定通知書」を受領後、申請時に提出した補助事業計画に沿って事業を実施し、事業は補助事業実施期限までに完了する必要があります。
ただし、交付決定日(交付決定通知書の日付)から補助事業実施期限までに発注、支払いを完了したもののみが補助対象となります。
※補助事業の内容または経費の配分の変更を希望する場合、別途計画変更の申請が必要です。
補助事業の進め方の詳細案内については、次のリンクをご覧ください
⇒ https://r3.jizokukahojokin.info/susumekata8/
(2) 実績報告書の作成・提出
補助事業終了後、その日から起算して30日を経過した日又は最終提出期限のいずれか早い日までに補助事業の実施内容と経費内容を取りまとめた実績報告書を事務局へ郵送・提出します。。
※実績報告書の作成・提出にあたっての詳細は次のリンクをご覧ください。
⇒ https://r3.jizokukahojokin.info/jisseki.php
(3) 確定検査・補助金額の確定
商工会議所・商工会補助金事務局は、実績報告書の他に支出ごとの算出根拠書類について、審査・確認を行い、補助金額を確定します。
支出ごとの算出根拠となる書類とは、見積書、発注書、契約書、納品書、請求書、領収書、預金通帳の該当部分の写し等が該当します。
また、必要に応じて現地調査を行う場合もあります。
(4) 補助金の請求
補助金額が確定した後、「補助金確定通知書」が送付され、金額を確認して商工会議所・商工会補助金事務局に精算払請求を行います。
(5) 補助金の入金
精算払い請求を行ってからほぼ数週間後に補助金が振り込まれます。
(6) 事業効果報告
補助事業の完了から1年後に「事業効果および賃金引上げ等状況報告」(交付規程様式第14号)を文書等で提出が必要になります。
6 まとめ
小規模事業者持続化補助金はまちの小売店など小規模事業者にとって、使い道の幅が広くとても活用しやすい補助金制度です。
ただし、全国規模の公募で毎回公募期間ごとの同種事業の応募者数も多く、申請書の審査を通過したとしても必ずしも採択されるとは限りません。
採択されるには、事業の内容が自社・自店の将来の経営にとって生産性の向上と持続的発展を図ることが目的になっていることが特に重要になります。
それには、自社・自店の現状を的確に把握し、課題を明確にしたうえでこれを克服するための方策などを経営計画書に示すことが必要になります。
本補助金事業は、商工会議所・商工会の伴走支援を受けながらの事業であることから、まずは実施しようとしている内容が本補助金制度の目的に適っているのかどうかを商工会議所・商工会と事前に十分打ち合わせをして確認しておくことポイントとなります。
さらに、申請書類の作成、添付書類の準備等についても各段階において、商工会議所・商工会の指導を仰ぎながら、順を追って作成・準備を行ってゆけばそんなにハードルが高いものではありません。
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