京都に「夷川通商店街」というのがあります。
この商店街は、京都のほぼ中心部、京都御所の南に位置します。
かねてから、家具店、建具店、古道具店などが集まる「家具の街」として歩んできた歴史があります。

この街もこの頃では、こだわりが詰まったカフェ、レストラン、お洒落な趣味の店、伝統を受け継ぐ菓子店など、時代とともに様変わりしつつあり、伝統的なものと新しいものが混在するなど一般的な商店街とは趣を異にした商店街として市内のみならず、他府県の人々も訪れる特徴的な商店街になっています。
どのあたりが他の一般的な商店街と違うのかは次の3点になります。
①食料品や日用品を買い求める商店街ではない
②普段見かけないお店が多い
③まちの雰囲気がどことなく違う
この特徴的な商店街について、多くの人にこの商店街を知っていただき、馴染んでいただくにはどのような方法があるのか、何をしたらいいのかを考えてみました。
目次
1 最近の取り組み
「夷川通商店街」は過去、地域の中核を担うコミュニティーの場としての役割を担うために近隣の小学校や地元住民に溶け込むための取り組みや「夷川通商店街」を多くの人に知ってもらい、ひとりでも多くの人に来てもらうために次の取り組みを行っています。

上表を解説すると以下のようになります。
(1) 地元小学校とのコラボ
上表の中で特に目を引くのが、毎年行っている「児童絵画展」です。
この催しは、夷川通商店街の北隣にある「御所南小学校」の児童が描いた絵画を商店街の各店舗のウインドウに飾り、道行く人々に見てもらおうという試みで、古くからお付き合いのあるお隣の小学校との縁により毎年秋に行っているものです。
その他に、ストリートクイズラリー、ゆるキャラコンテストなど小学校児童や先生方と一体になった取り組みを行っています。
(2) 商店街の認知度向上のための取り組み
多くの人に「夷川通商店街」を知ってもらうために、商店街ではこれまで次の取り組みを行ってきました。
・ホームページのリニューアル
⇒ https://www.ebisugawa.net/ (夷川会)
・「まち歩きMAP」の作成
・「のぼり」の制作
この中でも特に、「まち歩きMAP」は「御所南ストリート」の名前を冠し、商店街全店を紹介するだけではなく、歴史、近辺の地域資源ともいうべき名所・旧跡などを紹介した優れもので、夷川通の特徴、良さが凝縮されたガイドブックになっています。

(3)集客のための取り組み
「夷川通商店街」では、ここ最近、毎年「歳末感謝祭」と銘打って、商店街で買い物をされたお客さんに対して、抽選で商店街で使用できる商品券をプレゼントするキャンペーンを行っています。
このキャンペーンは以前では組合員が手作業で抽選会を行っていたが、昨年からオンラインアプリによるデジタル抽選会に切り替えたことにより、随分手間が省けるようになりました。
抽選会への参加者は、地元住民以外の他府県からの参加者も多数あり、この商店街独特のお客さんの層の厚さを物語っています。
2 この商店街をもっと多くの人に知ってもらうには?
この個性的な商店街をもっと多くの人に知ってもらうにはどうしたららいいか。
日常的な買い物をする商店街ではなく、“知る人ぞ知る”という特徴的な商店街であるだけに
もっと多くの人に知ってもらい、この商店街の良さを感じてもらうにはどのような方法があるのでしょうか。
いくつかの(案)を考えてみました。
(1) 「御所南ストリート」の名称は「夷川商店街」よりインパクトが強い
「夷川通商店街」は、これまで「家具の街」で市民から親しまれてきましたが、もっと広く地元以外の方や観光客を含めた他府県の人の注目を集めるためには、伝統ある街中にも新しさが感じられる「御所南ストリート」のネーミングがこの町のイメージにピッタリです。
商店街では次のような「御所南ストリート」のロゴを作成しました。

これからは、「夷川通商店街」の新看板として外向けにこの「御所南ストリート」を大々的に売り出していってはどうでしょうか。
(2) 「御所南ストリート」と「まち歩きMAP」を同時にPR
夷川通商店街の2枚看板である「御所南ストリート」と「まち歩きMAP」をより多くの人に知ってもらうための方法としてはいくつかありますが、その中からできそうなものを挙げてみます。
◆SNSをフル活用
商店街を多くの人に知ってもらう最も一般的な方法はSNSを使って商店街や個店の情報を発信することです。
Facebook、LINE、X、インスタグラムなどで絶えず情報発信を行います。
情報の種類としては、、
・まちの風景
・変わった店の看板、
・近所の祭事、
・商店街の催し
など「御所南ストリート」ならではのものを情報の鮮度が落ちないうちに発信します。
そこで大切なことはフォロワーを増やすことを心掛けることです。
フォロワーを増やす方法は次のようなものがあります。
・定期的に十分な量を発信する。
・関心を持ってくれそうなアカウントをフォローする
・ハッシュタグを活用する
・写真や動画コンテンツを多用する
・成功している他のアカウントを参考にする
まずは、情報の鮮度を保つために定期的に情報発信を行うことが何よりも重要です。
◆ あらゆる広報物に「御所南ストリート」のロゴを使用
「御所南ストリート」をより印象付けるために商店街が出すあらゆる広報物などにこのロゴを印刷して使用します。
例えば次のようなものです。
・チラシ
・各種案内
・DM
・封筒
これらのものにさりげなく目のつくところに表示しておくことで、見た人に自然に覚えてもらえるようになります。
◆京都府が発信しているYoutubeチャンネル「商店街Now!」取り上げてもらう
京都府商店街創生センターではおおよそ1か月ごとに府内の商店街を紹介するYoutubeチャンネルを公開しています。
ここでは、取り上げた商店街について、商店街の特長などを商店街の役員などにインタビュー形式で紹介してもらう内容になっています。
これまで、通算50回を超える商店街が紹介されています。

京都府「商店街Now」⇒ 京都・商店街創生センター – YouTube
◆メディアに取り上げてもらう
商店街をテレビ、新聞などに取り上げてもらえれば、一気に知名度が上がります。
地元の新聞やテレビ局に対し懸命にアプローチをしなければなりません。
ただし、取り上げてもらうには、
歴史、まちの特徴、個性 などで、読者や視聴者に驚きや感動、共感を与えることができるかどうかがポイントになります。
「夷川通商店街」は十分この条件をクリア―しています。
3 商店街へ多くの人を集めるには
この特徴的な商店街を多くの人に知ってもらうための方策は前記の通りですが、多くの人に来てもらうためにはどのような方法があるのでしょうか。
以下の方法があります。
(1)「まち歩きMAP公開」キャンペーを行う
この商店街の「まち歩きMAP」は、先に紹介したように、商店街の特徴と各店舗、歴史、近辺の地域資源ともいうべき名所・旧跡などをもれなく紹介した優れたガイドブックになっています。
これを核店舗においておくだけではいかにももったいないので、考え出されたのが、「まち歩きMAP」公開キャンペーンです。
◆「まち歩きMAP」公開キャンペーンの方法とは、
「まち歩きMAP」を見た人に期間限定で抽選により景品を差し上げるというものです。
商店街がQRコードを設置した「まち歩きMAP」を作成し、これを見た人が別に作ったシリアルNO付のキャンペーン参加票からキャンペーンに参加するというものです。
キャンペーン用の「まち歩きMAP」とキャンペーン参加票を商店街の各店に置き、来店客にこれを渡しキャンペーン参加を促します。
景品進呈のための抽選はオンライン方式の抽選で、キャンペーン参加者は即座に「当り」はずれ」が分かります。
キャンペーンの詳しい方法は次のようになります。
<商店街>
□キャンペーン用の「まち歩きMAP」を作成
一般に配布されているも「まち歩きMAP」とは別に、キャンペーン参加用に末尾にキャンペーン参加QRコードを設置した「まち歩きMAP」を別に作成します。
□キャンペーン参加票を作成
シリアルNO付キャンペーン参加票を作成します。
□キャンペーン参加フォームを作成
キャンペーン参加希望者が必要事項を入力するフォームです。
<お客さん>
□キャンペーン参加フォームに必要事項を入力し送信
キャンペーン用「まち歩きMAP」のQRコードから「キャンペーン参加フオーム」を表示し、これに参加票のシリアルNO、住所、氏名を入力し、商店街に送信します。
(2) 過去の顧客名簿を活用する
商店街では、これまでに「歳末感謝祭」と銘打って何回かのキャンペーンを行っています。
その時に来ていただいたお客さんの名簿を保管しており、これらは商店街の資産ともいえる「顧客名簿」としての価値があります。
これを商店街への集客用として活用するのです。
「夷川通商店街」で最近行ったキャンペーンなどに来ていただいたお客さんの人数、傾向は次のようになります。

上表からの特徴として、
□他府県からもお客さんが来ている
□市内でも地元中京区以外からのお客さんも多くいる・
が見て取れ、他の商店街に比べても極めて特徴的な商店街であることが分かります。
この顧客名簿を大いに活用し、今後商店街が行うキャンペーンやイベントなどに来街を促す案内を行うのです。
(3) 「プレミアム付き商品券」を発行する
「プレミアム付き商品券発行事業」とは、
例えば、
商店街が、500円券を22枚つづり1冊を10,000円で発行した場合、これを買ったお客さんは、10,000円で11,000円分の買物や飲食ができるというものです。
この場合、1,000円がプレミアム分となり、商店街の負担になります。
参加各個店の金銭的な負担はほぼなく、確実に集客効果が期待できる事業であるといえます。
ただし、商店街には次の事務負担が生じます。
・商品券販売状況の管理
・商品券の利用状況の管理
・個店への換金
さらに、次の経費が必要になります。
・商品券の作成・印刷費
・広告・宣伝費
・プレミアム分の負担
一方、各自治体では、地域の商業振興を目的として「プレミアム付き商品券発行事業」を
補助金事業として採択し、プレミアム分と必要な事務経費について補助するというケースが増えてきています。
ぜひ、この補助金事業にエントリーしてみてはどうでしょうか。
4 多くの人はこの商店街をどのように感じているのか
この「夷川通商店街」だけではなく、どの商店街でも集客のために様々な方法を考えますが、大切な視点として、お客さんがその商店街をどのように感じているかを考える必要があります。
お客さんから見た「人が集まる商店街」とはどのようなものかを一番よく知っているのはお客さんだからです。
その方法として、「夷川通商店街」の場合、近隣の地域の人と先述した顧客名簿から他府県を含めた立ち寄っていただいた人からのアンケート調査を行うのが有効です。
◆アンケートの目的と効果
アンケートは商店街の「強み」と「弱み」を把握することに目的があります。
そのためには、、通り一遍のアンケートではなく、お客さんの「本音」を聞き出すことが大切です。
◆近隣のお客さんと地域外から立ち寄られた人では聞く内容が変わる
<近隣のお客さんの場合>
・この商店街の良いところ、気に入っている点
・こうすればもっと良くなると思う点
<地域外からのお客さんの場合>
・この街に来られた理由
・来てよかったと思うところとその理由
・来てがっかりした点とその理由
・また来ようと思うかどうか
◆アンケート調査結果を受けて
アンケート調査結果から商店街の「強み」と「弱み」をある程度把握することができます。
これを受けて、商店街では、
・「強み」はこのまま伸ばして行く
・「弱み」は改善が必要なところなので、できるところから改善して行く などの対応が必要です。
5 まとめ
今回、紹介した「夷川通商店街」は、昔から「家具の街」として歴史を刻んできて、現在ではお洒落なカフェ、レストラン、趣味の店。伝統を受け継ぐ菓子店など、他の一般的な商店街とは趣を異にした商店街になっており、日常のお買物をするような商店街ではありません。
このような商店街を地域内外からお客さんを集めるには、当商店街の特色をいかにしてアピールしていくかがカギになります。
その方法として、
・商店街のネーミングを一新し、より目を引く「御所南ストリート」ととして、広く広報する
・特徴的なお店を網羅した「まち歩きMAP」を多くの人に見てもらうためのキャンペーンを行う。
などがあります。
また、同時に商店街として一般的な集客法である
・プレミアム付き商品券発行事業
も有効な方法です。
さらに、お客さんの声を反映して商店街の「強み」と「弱み」を把握し、「強み」を伸ばし、「弱み」を改善していくという考え方を取り入れていくことも必要でしょう。
「夷川通商店街」は従来から地域とのコミュニティーを大切にした活動を行ってきており、
近隣の小学校とのコラボや地域住民との交流など、これからもその中核としての活動を続けていくことも大切なことです。
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