「セルフレジ」ってどうなのか?/本当に便利なものなのか

昨今の人手不足の解消と経営の効率化を目的にスーパーやコンビニでは「セルフレジ」が急速に広がっています。
お客さんや店側にとって「セルフレジ」は本当に便利なものなのかどうなのか
本記事では、この問題を掘り下げた毎日新聞の記事からまとめてみました。

―毎日新聞 「論点」2024年12月6日-

1 「セルフレジ」とは

 「セルフレジ」とは、お客さん自身が商品についているバーコードをスキャンして機械に読み取らせたり、現金やカードを機械に入れて自分で支払いの作業をしたりするレジシステムのことです。

 コロナ禍を機に現金の受け渡しなど人と人との接触をなるべく避ける狙いから世界各地で広がり、日本では働き手不足などもあって、スーパーやコンビニなどでのレジ業務の省力化を図る手段として急速に普及しています。

2 「セルフレジ」の特長

「セルフレジ」は大きく分けると
 ①フルセルフレジ
  ・お客さんが自身で商品の登録から決済までを行う

 ②セミセルフレジ
  ・お客さんが決済だけを行う

に分けることができます。

3 「セルフレジ」は使いやすいか

今年度のスーパーマーケット白書によると、スーパーでの「セルフレジ」の普及率は、
 ・セミセルフレジ 78%
 ・フルセルフレジ 31%

と報告されています。

「セミセルフレジ」はお客さんは代金を払うだけで決済手段も現金かカードに限られるので使いにくいと感じる人はほとんどいませんが、「フルセルフレジ」を使いにくいと感じる人はとても多いのです。

◆「フルセルフレジ」は初めてのお客さんには大きな負担になる

フルセルフレジ」では、まず
 ・商品と会員カードのスキャン作業
があり、これを終えると、
 ・現金
 ・クレジットカード、電子マネー
 ・スマホ決済
 ・ポイント使用の有無

などの多くの選択肢があり、これらの複雑な仕組みが初心者にとっては大きな負担になるのです。

これらの多くの作業手順に加え、商品のスキャンミスによるスキャンのやり直しなどが重なると、慣れないお客さんにとっては、後ろの順番待ちの列が気になり、これが焦りに繋がりさらにボタンの押し間違いなどを起こしてしまい大パニックに陥ってしまいかねません。
また、商品のスキャンミスでお店から不正を疑われることを恐れるという人もいます。
「フルセルフレジ」の利用者ががもう一つ伸びない理由がこのようなことがあるようです。

3 店側の対応はどうか

「セルフレジ」が普及するにつれて、お客さんがスムーズに利用できるよう、また不正利用によるトラブルを防止するため店側はどのような対策を行っているのでしょうか。

◆店員による声掛けは万引きの防止にもなる

スーパーでは店員をセルフレジ周りに配置し、困っているお客さんに積極的に声掛けし、手伝うなどのレジ操作をサポートしています。

実はこれが万引きの防止に役立ちます。

多くの店のセルフレジでは、精算中のお客さんの手元を映すカメラを導入していますが、これらは事後に検証することができても万引きの防止には役には立ちません。

我が国における万引きの被害総額は年間4千億とも1兆円とも言われています。

「セルフレジ」での商品をスキャンしない清算は単なるスキャンミスなのか意図的なのかは分かりにくく、ある意味万引きの温床となっている側面があります。
スーパーのなかには、お客さんから「疑われている」と思われることを極度に嫌がり、万引き防止に消極的な店もあります。
「セルフレジ」周りに配置された店員は、お客さんを監視するのではなく、あくまでもレジ操作のお手伝いをする意味から積極的に声掛けを行うことにより、その店の損害を未然に防ぐことができるのです。

4 まとめ

人手不足解消と店舗経営の効率化を図るために今後もスーパーなどの量販店やコンビニはセルフレジの導入が増えてきます。
決済だけを行うセミセルフレジはともかく、商品スキャンから精算までをお客さんがすべて行う「フルセルフレジ」は慣れない人が多く、爆発的に普及するのはもう少し後になりそうです。
「フルセルフレジ」は、万引きなどの温床になりやすいことから、セルフレジの普及促進とともに店側の損害防止の意味から、レジ周りに店員を配置し、お客さんに積極的に声掛けし、コミュニケーションを図ってゆくことがお客さんと店側にとって「セルフレジ」普及の要となります。