※本投稿は2022年6月末時点の情報です!
毎年、国や各自治体は中小企業や小規模事業者向けに多くの補助金事業の募集を行っています。
コロナ禍の傷が癒えない多くの中小企業や小規模事業者にとって、新たに始めたい事業などが資金不足により思うように始められないジレンマに陥っている中、まさに喉から手が出るほどほしい救いの手です。
とは言っても、補助金事業には当然ながら細かい交付条件が設定されており、これをクリアしなければ交付を受けることができません。
ここでは、主に各自治体が公募する小売商業者向けの補助金事業に対し、まちの小売事業者の補助金交付希望者がスムーズに補助金交付事業者として採択されるための交付申請書作成のポイントとして
・補助金事業の公募内容の確認
・補助金交付申請書作成
・交付申請図書類の提出
について解説します。
目次
1補助金事業の公募内容の確認
自治体や商工会議所などの関係機関が補助対象事業の公募を開始するにあたってはリーフレットなどの広報物やホームページにより公募概要を公表します。
公募の内容としては、
・公募期間
・補助対象事業
・補助対象事業者
・補助対象経費及び補助金
などが書かれています。
これで各事業者が応募できるかどうかのイメージがつかめますが、より詳細な内容を確認するために同じ頃に公表される「補助金交付要綱」をよく読み、応募できるかどうかを判断する必要があります。
「補助金交付要綱」は、当該補助金事業公募における基準や取り決め事項を事細かに記載した行政機関などの補助金交付事務の基準であり、これに反している交付申請書は受領されません。
補助金交付要綱は自治体のホームページで確認することができます。
(「補助金交付要項」が公表されない場合は、不明な点については申請窓口に問い合わせる)
「補助金交付要綱」の内容は次のとおりです。
以下に内容確認におけるポイントを上げます。
(1) 補助対象事業者
以下の内容確認を行います。
・個店のみなのか小売商業団体も対象になるのか
・個店の従業者の人数の制限の有無
・小売商業団体の法人格の有無
などがあります。
その他に
・小売商業団体の定義として
法律に規定する事業協同組合,企業組合,協業組合,商工組合、生活衛生同業組合、7酒造組合
・法人格のない小売商業団体の定義として
定款,会則等において,地域商業の活性化又は中小企業等が共同して商業活動を行うために設立したことが明らかである団体
さらに
・事務所の場所
・法人格のない団体の構成員数
・銀行口座の有無
・設立年月日
などの規定が設けられています。
(2) 補助対象事業
申請希望者が最も注視しなければならない内容で、この内容により応募できるかどうかがほぼ決まります。
ここには、
・対象事業の詳細
・対象事業者
・事業の例
・補助対象外経費
が事細かく記載されています。
また、対象事業によって対象事業者が区分されている場合もあるので注意が必要です。
(3) 補助対象経費
補助対象事業を実施する上で必要な経費のうち、補助対象となる経費のことで事業内容によって様々ではあるが、事業に直接必要な経費になります。
<補助対象外経費>
一方で、事業を実施する上で必要な間接的な経費である、公租公課、光熱水費、アルバイトを除く人件費、仕入れに関する経費、飲食接待費、景品、汎用パソコンなどは補助対象外の経費として扱われることになります。
(4) 補助金の額
補助対象経費の全額が補助金として交付されることは特別の場合を除きなく、大抵は補助対象経費の1/2、2/3、3/4のように補助率として定められていることが多いです。
<補助上限額>
さらに、多くの場合、補助対象経費の合計の2分の1以内の額であっても、一定の額以上は補助金として交付されないことがあります。
例えば、
補助対象経費の合計が3,000,000円で補助率が1/2の場合、補助金が1,500,000となりますが、補助上限額が1,000,000円と定められている場合は、補助金の交付額は1,000,000円となります。
また、国や他の行政機関へ同様の事業で、交付申請が認められている事業については、これらの補助金交付申請額を差し引いた残額に補助率を乗じた額が当該補助金申請額になります。
(5) 補助対象事業の実施期間
事業の開始時期は多くは交付決定を受けた翌日から翌年の2月末日、3月末日としている場合が多くなっています。
上記のように、補助金事業には様々な制約や決まりごとがあります。
応募希望事業者は、「補助金交付要綱」をよく読んで、応募しようとしている事業がこの要綱に合致しているかどうかを必ず確認してから応募するようにしましょう。
2 補助金交付申請書作成
ここでは、ある小売商業団体が補助金事業を行うための補助金交付申請書を例に説明します。
【補助金交付申請書】
【事業予算書】
【事業計画書】
ここからは、補助金の交付申請書作成のポイントについて説明します。
補助機交付申請書の多くは、この例のように
① 交付申請書(鑑)
② 事業予算書
③ 事業計画書
④添付図書類
の4部構成になっています。
(1) 交付申請書(鑑)
交付申請書(鑑)は、当該申請の内容を一括してまとめたもので
・申請者又は団体の名称、所在地、代表者名、連絡先
・事業区分、事業名称
・事業実施期間
・事業の目的及び概要
・事業費及び補助対象経費、補助金交付申請額
などを記載します。
①事業区分
当該補助金事業における事業内容を種別ごとに区分したもので、該当する事業種別を選択します。
②事業名称
事業区分に応じた事業内容が一目でわかる名称にします。
(例:消費喚起のための広告・宣伝事業)
③事業実施期間
補助金交付要綱で決められた期間内とします。
(委託業者などとの協議や見積もり期間も含める)
④事業の目的及び概要
当該事業を行う必要性について、その背景から簡潔に記載
事業概要については、事業内容の要点を記載
※補助金交付要綱の補助対象事業の内容に整合している必要があります。
⑤事業費及び補助対象経費、補助金交付申請額
・総事業費
当該事業に必要な総事業費
・補助対象経費
総事業費のうち、補助金交付要綱に定められた経費
・補助金交付申請額
補助対象経費のうち、補助金交付要綱に定められた補助率を乗じた額
(2) 事業予算書
当該事業に必要な経費を経費別にまとめたもので、事前に必要となる項目とその数量を整理しておき、該当する項目ごとに業者を選定し、見積もりを採っておきます。
①経費内容
当該事業で必要な経費を項目別に記載
補助対象経費と補助対象外経費を区分します。
②金額
経費の項目別に金額を記載
補助対象経費と補助対象外経費ごとに小計しておきます。
③積算内訳
経費項目ごとに必要な数量と単価を記載
④支払先
見積もりを採った先が支払先
(複数社の見積もりを要求される場合がある)
※金額が消費税を含むのか含まないかについては、補助金交付要綱を確認しておきます。
消費税を補助対象外経費に租税・公課が含まれている場合は、税抜き経費とする。
⑤事業資金調達計画
・補助金
補助対象経費に補助率を乗じた額
多くの場合は千円未満を切り捨て、千円単位としている。
・自己資金
事業経費から補助金を差し引いた額
(3) 事業計画書
当該事業の内容を(1)の交付申請書の内容を詳細に補足する内容となっており、次の項目を記載します。
・申請者又は団体の概要 名称、代表者名、設立年月日
・事業名称
・事業実施期間
・実施場所
・事業目的
・事業概要
・事業の成果見込み
を記載しますが、
特に次の3点は、「補助金交付要綱」の補助対象事業の内容に整合するような内容でなければなりません。
①事業目的
現状の課題とそれを改善するために行う事業であるということを強調します。
②事業概要
当該事業の内容を具体的に記載します。
③事業の成果見込み
当該事業を行うことにより得られる成果の見込みについて次の内容を記載します。
・得る成果の目標値
「KPI」と呼ばれる業績評価指標により数値による目標を設定します。
(例)
リピーターの確保 80%
新規顧客の確保 200人
・成果の目標値設定の根拠
・成果指標の計測方法
(4) 添付図書類
補助金交付申請書の内容を証する資料として次の添付資料が必要になります。
①見積書の写し
②団体等では、総会または理事会等の議事録
当該事業が正式な手続きを経て機関決定を行っているかどうかを証明
③団体等では定款または会則
申請団体等の社会的信用性の証明
④団体等の構成員名簿
また、個人事業者では、見積書の写しの他に次の書類を求められます。
①本人確認書類
運転免許証、マイナンバーカードの写し
②納税証明書(不要な場合もある)
③開業届
3 交付申請図書類の提出
交付申請書の提出については、この頃では電子申請やメールに添付するケースが多くなってきており、これまでのように代表者の印が必要ではなく、行政との内容修正などのやり取りはメールによることが多くなっており、非常にスピーディーな申請が可能となっています。
これに伴い、添付図書類についても、事前にPDFなどにデータ化しておく必要があります。ただし、添付データーが大きくなると一度にまとめて送付できない場合があるので、データ化するとき、適度なデータ量になるように調整しておかなければならないこともあります。
4 まとめ
これまで、自治体が公募する小売事業者向けの補助金事業の交付申請の方法について記してきましたが、いくつかの注意しなければならない点があります。
●全額補助という補助金制度は特別な場合を除きないので必ず自己負担が生じます。
したがって、補助金事業に応募する場合は、相応の負担額を用意しておく必要があります。
補助金獲得を目的に不要不急の事業を起こすといたずらに財政を圧迫することになります。
●補助事業のリーフレットの内容のみで応募するのではなく、必ず「補助金交付要綱」を熟読し、または疑問点については、応募先の窓口に問い合わせをするなどして、応募しようとする事業が公募内容に合致しているかどうかを確認してから応募する必要があります。
●申請内容については、実施がおぼつかないような無理な実施内容にせず、余裕をもって完了できる事業でなければ、後の実績報告書提出時に大きな矛盾が生じ、変更承認願いや事業取り止め承認を行わなければならない事態になりかねません。
以上の注意点を踏まえた上で、新しい事業を計画している事業者の方々は積極的にこれらの補助金事業制度を活用すればと思います。
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