はるばる九州まで着物の販売に!|【委託販売】の方法と注意点など

ある呉服屋さんの話です。

この方Sさんは、京都のある有名呉服商に勤めていましたが、わけあってそこを辞め独立しました。
最初は以前の勤め先で培ったノウハウを発揮して順調な立ち上がりであったが、肝心の新規顧客の獲得がもうひとつ振るわず、じきに行き詰ってしまいました。
そこで、持ち前の行動力を活かして、販路の開拓をすべくこれまでの人脈を頼りに思い切って九州の宮崎、大分、熊本、鹿児島に向けて、着物の移動販売を始めたのです。
それが今から約20年前です。
以降、ホテル、公民館、以前の職場での縁で知り合った地元の呉服屋さんなどで展示販売会の形式で商売をしていました。
しかし、折からのコロナ禍により、今ではお客さんを集めることができなくなったのです。
ホテル、公民館などの公共施設から相次いで会場の貸出を断られたのです。
困り果てたSさんは、これまでの知り合いの呉服屋さんに頼み込んで販売方法を委託販売に切り替えました。
そして、これまで培ってきたお互いのの信頼関係により、今では約50軒の顧客を得ることができ、月の半分は九州に足を運ぶ商いを行っています。

1 委託販売とは

委託販売とは、自分の商品を自分で販売するのではなく、他の店に預かってもらい、そのお店で代理で販売してもらう販売形式をいいます。
商品が売れた場合、あらかじめ委託販売契約時に決めた販売手数料を差し引いた金額が代理販売店から支払われます。

Sさんの場合でいうと、1万円の商品を5点ほど、あるお店に預け、販売手数料率を30%としていた場合、1万円の商品が1点売れるごとに
 10,000×(100-30)%×1=7,000円
が売上金額となり、預かったお店は3,000円の手数料が収入として計上できることになります。

2 一か月の半分は代理店回り

Sさんは月の前半を九州各地の委託販売先廻りを行います。
仕入れた商品をワゴン車に積んで神戸港から瀬戸内海フェリーで一晩かかって新門司港まで行き、そこから九州各地の委託販売先廻りを行うのです。
なるべく安いビジネスホテルや懇意にしている委託販売先の個店宅に宿泊を重ねながらです。
それでも、1回当たりの九州出張では、フェリー料金やガソリン代などで95,000円程度かかるそうです。

3 商品の仕入れは京都で

商品の仕入れは、主に京都の室町の問屋で行っています。
ご存知のとおり、着物といえば京都、それも室町筋が本場です。あらゆる品物が揃っています。
Sさんは、九州の委託販売先を廻っているうちに、消費者に喜ばれる品物はどのようなものなのか、年代層、季節などに応じて必要とされる商品はどのようなものなのかなどを徹底的にリサーチし、あくまでもお客さん本位にこだわり、自身の思い入れを極力排除した仕入れを行っています。

4 委託販売先は自分で探さなければならない

信頼できる委託販売先を自力で見つけるのは大変な労力が必要です。
Sさんの場合は、最初はホテル、公民館、前の職場での縁で知り合った地元の呉服屋さんなどで展示販売会を行い、そのうちに評判が評判を呼び、多くの販売代理店の獲得に結びつけていったのです。
他に地元商工会などが主催する展示販売会のイベントに参加し、そこで声掛けを待つという方法もあるようです。

5 委託販売に出すときの注意点等

販売を委託は、自分で売る店と売る手間が必要でない代わりに、下記に示すいくつかの重要なポイントがあります。

(1)双方納得した上での契約書を交わす。
委託時に、預ける方と預かる方でのしっかりした契約書を交わしておく方が後のトラブルを回避する意味で安心です。
中にはそんな杓子定規なことと嫌がる預け先もあるようですが、預ける方としては大切な商品を相当期間預けることから、疎かにはできません。
契約の内容としては、
 ・委託料、手数料
 ・販売委託期間
 ・販売数量
 ・汚損などの補償
 ・商品引き揚げ時の費用分担

などがあります。
その他に預ける商品の種別、数量等を納品書という形で渡すこともあります。

(2)委託料や手数料が必要
委託先に売ってもらうために、おおよそ売上に対して委託料や手数料が必要です。
さらに多くの売り上げが見込めるような立地のいい場所であれば手数料に上乗せを求められる場合があります。

(3)委託料や手数料、売主の販売方法などにより利益幅が少なくなる場合がある。
人通りの多い立地のいい店舗などにおいてもらうと、それだけで多くの人の目に触れ、売れやすくなりますが、商品によっては店の都合でセール品となったり、別途場所代名目で手数料に上乗せされることもあり、予定していた利益幅が大幅に小さくなる場合があります。
したがって、単価の低い商品などは利益が出ない場合も生じます。

(4)自分で商品の管理ができない
預けた商品が販売店でどのように扱われているかは預けた方では知る由もありません。
展示の仕方によっては、お客さんが触って傷が付いたり汚れているかもわかりません。
特に着物などデリケートなものは、取り扱いについて委託販売先と十分話し合っておく必要があります。

(5)委託期間が過ぎた商品引き取り時
委託期間が過ぎた商品を引き取る際、自分で引き取りに行くのはいいのですが、送り返してもらう場合は、送料の負担区分について、事前に確認をしておく方が無難です。
また、返品された商品については、納品数に対しての売上数と返品数の数量と売上金額の確認を行います。

6 まとめ

委託販売は自分の店を持つ必要がなく、店や商品の管理費などの固定経費が必要でなく、商品を仕入れさえすれば、後は委託販売先の売る能力に任せるしかありません。
委託販売が成功するかどうかは、自分の商品に合う委託販売先をいかにして見つけるかがカギになります。そして、自分の行動力、委託販売先とのお互いのコミュニケーションを大切にし、日頃からの信頼関係を十分築いておくことが重要です。










 

 


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