最近「クラウド」というフレーズをいろいろなところで見聞きします。
ここでは、”クラウドとは何?”というまちの小売店など小規模事業者にとって、あまり馴染みがないかも知れない「クラウド」の
・クラウドサービスとは?
・クラウドで仕事の方法が進化
・クラウドサービスのメリット、デメリット
・クラウドサービス導入の注意点
などについて、クラウドサービスの基礎的なことを解説します。
目次
1 クラウドサービスとは?
「クラウド」とは、ユーザーに向けたすべてのサービスがインターネットを介して行なわれるのが、クラウドというサービスです。
「インターネットの向こう側に目に見えないけれど何か大きなサーバーみたいなものがあって、そこに接続しさえすれば、簡単にいろいろなことができるらしい」というイメージになります。
言い換えれば、ユーザーがソフトウェアや※1ストレージを持たなくても、インターネットを通じて、
・必要なサービスを
・必要な時に
・必要な分だけ
利用できるサービスのことです。
※1【ストレージ】:デジタル情報を記録・保存するハードディスクや光磁気ディスクドライブなどの記憶装置の総称のこと
(1) クラウドサービスのイメージ
従来、PCソフトなどは利用するパソコンにインストールして利用するのが一般的でしたが、クラウドサービスでは、ユーザーがインターネット等のネットワークを経由して提供元のサービスを利用できるため、インターネット環境さえあればどのような場所でも端末を選ばずにファイルのアップロード、ダウンロードなどサービスを利用できるものです。
(2)クラウドサービスの種類
現在クラウドが行っているサービスには次のものがあります。
□WEBメール
過去の受信メールやアドレスをインターネット上に保存することにより、パソコン、タブレット、スマートフォンからどこにいてもメールのチェックができます。
GmailやYahoo! メールがこれにあたります。
□クラウドストレージ
パソコンのハードディスクに当たるもので、クラウドストレージと呼ばれています。
このクラウドストレージにアクセスすることで、どこからでもパソコン、スマートフォン、タブレットなどの様々な端末を使ってデータを引き出すことができます。
□音楽ストリーミング
クラウド上に置かれた数百万もの曲をにアクセスでき、CD、DVDなどのソフトやダウンロードは不要で音楽を楽しむことができます。
□写真・動画用ストレージ
このストレージにアクセスすることにより、静止画・動画を複数の端末で共有することができます。
□クラウド開発ツール
プログラム開発、WEBデザイン、写真加工、編集などの作業では、専用の開発ツールは必要なく、Webブラウザ上で行うことができます。
□クラウド仮想サーバ
クラウド上に、さまざまなデータをやりとりできるサーバを配置するサービスで、クラウド仮装サーバと呼ばれており、複数のユーザーがこれをシェアすることで、ネットワークをシンプルに構築することができます。
□クラウドサービスで広く一般に使われているもの
・Gmail
・Twitter
・Facebook
・Office 365
があります。
これらは、特にクラウドを意識することなく、多くの人々が日常的に使っています。
□利用形態によるサービス
クラウドサービスには、利用形態により以下の3つがあります。
① SaaS(サース、サーズ:Software as a Service)
電子メール、グループウェア、顧客管理、財務会計などのソフトウェア機能の提供を行うサービスです。
・「Googleマップ」「Yahoo!メール」「Micro office 365」「zoom」「slack」
② PaaS(パース:Platform as a Service)
アプリケーション実行用の※2プラットフォーム機能の提供を行うサービスで、アプリケーションの開発環境を提供するサービスです。
・「Google App Engine」「Microsoft Azure」など
※2【プラットフォーム】:ある装置やソフトウェアを動作させるのに必要な、基盤となる機器やソフトウェア、ネットサービス、あるいはそれらの組み合わせ(動作環境)のこと
③ IaaS(アイアース、イアース:Infrastructure as a Service)
ITサービスの運営に必要不可欠なインフラである※3「仮想サーバー」や「回線」など、ハードウェアやインフラ機能の提供を行うサービスです。
・「Amazon EC2」「Google Compute Engine」など
※3【仮想サーバー】:1台のサーバー上で複数のオペレーションシステム(OS)を動かし、複数のサーバーとして運用する仕組みのこと。 従来のサーバー構築では、1台のサーバーに1つのOSやアプリケーションをインストールし、特定の役割を持たせるのが一般的であった。
(3) クラウドサービスでどんなことができるのか
●誰でも、どこからでもデータを見たり、修正したりできる!
写真、動画や作った文書などのデータをクラウドに保存すれば、いつでも、誰でも、どんな端末であってもインターネットが使える環境であれば自分の端末で見ることができ、修正も行うことができます。
つまり、全く異なった場所で複数の人が複数の端末でクラウド上にあるデータを見て、必要に応じて修正などもできることになります。
●あらゆる場所であらゆる人と共同で作業を行うことができる
会社や事業所では、企画書、報告書などの書類を作成しますが、これらをそれぞれの部署ごとでインターネットでクラウド上のデータにアクセスし、データを共有しながら共同で作業を行うことができます。
●データ作成のためのアプリケーションは不要
仕事で日頃使っているアプリケーションやソフトは、これまではパッケージやネットからのダウンロードなどで、自分のパソコンにインストールしてそれを立ち上げなければ何もできませんでした。
しかし、クラウドを利用するようになると、WEBブラウザ上から必要なページにログインすればいいだけで、以前と同様の作業が行えるのです。
また、ソフトのアップデートも何もする必要はなく、クラウドサービスの提供者が行うので、使う側は何も意識することなく使い続けることができます。
●大容量ディスクが不要
クラウドでは、データ、プログラムはWEB上にあるので、必要なサイズのストレージと契約し、そこに保存しておけばパソコンや外付けのハードディスクは必要なくなります。
クラウドストレージはサイズに応じて、無料と有料がありますが、データ量に応じて使い分ければ高価な大容量ディスクを買い求めるより経済的です。
2 クラウドで仕事の方法が進化
(1) 仕事の方法が変化
クラウドが登場したことにより、仕事の方法が大きく変わることになりました。
クラウドが登場するまで仕事上の効率化を図るためには、
・サーバー本体、ハードディスクなどの外部ストレージの設置
・サービスに必要なソフトウエアーの購入や開発
・サービスが正常に稼働させるためにITに関する専門の知識と技術を持った人材が必要
・システム全体の管理は自社が全て一貫して管理
が必要で、機材の購入やシステムの構築、管理などに膨大な手間と費用を費やしてきました。
それに対し、クラウド登場後は、
●ソフトウエアーを動作させ、サービスを提供するのはクラウドベンダー
●ユーザーはインターネットを通じてクラウドベンダーが提供するサービスを受ける
●PCへの必要なソフトウエアーのインストールが不要
●サーバー本体、ハードディスクなどの設置が不要
など、ユーザーは誰もが必要な時に必要なサービスを必要な分だけ受けることができます。
利用者がPC、スマホ、タブレットなどの携帯端末などで動くWebブラウザとインターネット接続環境を用意することで、どの端末からでもさまざまなサービスを利用することができ、これまで機材の購入やシステムの構築、管理などにかかるとされていたさまざまな手間や費用の削減を図ることができます。
(2) クラウドサービスの実例
クラウドサービスは数え切れなくなるほど新たなものが次々と登場しています。
企業向けの代表的クラウドサービスを挙げると以下のようなものがあります。
① オンラインストレージ
スマートフォンのデータ移行や、仕事で使うファイルの共有や、やり取りなどが行えるサービスで、ストレージを共有するものです。
・「Google Drive」、「Dropbox」
② グループウェア
スケジュール管理やタスク(現時点での作業)の共有などを目的に使われるサービスです。
ある目的を持ったグループなどで情報の共有や仲間内での交流を行うことができます。 ・「Google Workspace(旧G Suite)」、「Microsoft Office 365」、「Garoon」、「Knowledge Suite」
③ 顧客管理システム
顧客情報の管理や、顧客対応・顧客満足度の記録ができるので、複数店舗間での情報共有ができ、顧客の満足度の向上などに役立てることができます。
・「kintone」「SkyDesk」
④プロジェクト管理システム
社内で一つのプロジェクトを実行して場合など、プロジェクトメンバーの進行状況の入力や確認ができます。
在宅ワークには役立つシステムです。
・「Trello」、「Jooto」、「Wrike」
⑤人事・労務の業務効率化システム
人事・労務業務を効率化しながら蓄積した人事データを一元管理できます。
・SmartHR
■個人向けのクラウドサービスの代表的なものとして以下のものがあります。
・One Drive
・iCloud Drive
・Google Drive
・Dropbox
3 クラウドサービスのメリット、デメリット
クラウドサービスを利用する上でのメリット、デメリットについては個人と会社や事業所などで利用する上で若干の違いがありますが、以下のようなものが挙げられます。
(1) メリット
①ソフトウェアのインストールや更新の必要がない。
②スマートフォンやPCなど、複数の端末でいつでもアクセスできる
③ローカルの環境でストレージを気にする必要がない
④自分のPCなどのローカル環境でバックアップの必要がない
会社や事業所などでは、
①初期費用の節約効果が大きい
・サーバー導入などの設備導入費が不要
・必要なソフトウエア―の購入費が不要
・システム構築費が不要
②サーバーなどの保守管理が不要
・メンテナンス、更新作業が不要
③どこでも利用できる
・社内チャット
・ファイルの共有
・※5ToDoリスト(タスク)の管理
④利用料が従量課金制で経済的
・使った分だけの支払い
⑤導入スピードが速い
・すぐ使い始めることができる
※5【ToDoリスト】:やることを書き出すことで頭の中にあるタスクの部分を整理すること
(2) デメリット
①自由にカスタマイズができない
・自社の運用に適したカスタマイズができない
②オンライン環境でないと利用できない
・インターネット接続環境の整備が必須
③サービス停止のリスクがある。
4 クラウドサービス導入の注意点
総務省の「クラウドサービスを利用する際の情報セキュリティ対策」では、クラウドサービスを利用する際の情報セキュリティ対策として次の7項目を挙げています。
①データセンターの物理的な情報セキュリティ対策(災害対策や侵入対策など)
②データのバックアップ
③ハードウェア機器の障害対策
④仮想サーバなどのホスト側のOS、ソフトウェア、アプリケーションにおける脆弱性の判定と対策
⑤不正アクセスの防止
⑥アクセスログの管理
⑦通信の暗号化の有無
これら注意店に関しては、信頼できるサービス事業者を選ぶとともに、社員全員に対し、データのバックアップの習慣化やセキュリティー面での指導を充分行う必要があります。
7 まとめ
クラウドは誰もが、どこでも、いつでも、必要な分だけを利用できる大変利便性の高いシステムです。
これまでのように高価なサーバーを設置し、高度なスキルを要するネットワークの構築も不要で、インターネットの接続環境さえあれば、だれもが手軽に様々なサービスを受けることができます。
これが、仕事や個人の生活の面にも急激に普及し、浸透してきた理由になります。
反面、不正アクセス、サービスの停止、データの流出・消失などのリスクが全くないわけではなく、日頃からセキュリティー面のチェックやデータのバックアップなどを怠らず、絶えず監視の眼を向け、社内全員でこれらの対策に取り組んで行く必要があります。
また、クラウドシステムはサービスの種類や提供形態によって、カスタマイズ性やシステム構築の有無などの特徴が変わってきます。
それぞれの企業や事業所の業務内容にに合ったクラウドサービスを選択をすることで、導入費用と維持管理面の負担、業務の効率化につなげることができます。
まちの小売店など小規模事業者にとっても、これらの「クラウドサービス」を活用することにより、仕事のやり方が効率的に変わってくるはずです。
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