わが国の家具全体における需要は、少子化・高齢化により長期的な伸びが見込めにくい傾向があるという観測がなされ、また、新築住宅の現象による家具購入の機会が減っているという指摘もなされています。
一方で、都市部を中心に小スペース向け家具や多機能家具の需要は根強く、自身の価値観に基づいた必要な機能のみを備えた家具のニーズが高まってきています。
また、ニトリ、IKEA、ネット通販の急激な伸びにより、価格、買いやすさなどの競争が激化し、まちの家具屋さんにとっては、店舗販売だけでの対抗は大変厳しい状況になってきています。
ここでは、古くからある「まちの家具屋さん」についての現状と課題、今後の経営方法などについてまとめています。

目次
1 「まちの家具屋さん」の経営は厳しい!
「まちの家具屋さん」を取り巻く経営環境は、このまま何も手を打たなければ、これまでのやり方では行き詰まってしまうかも知れない厳しい状況下にあります。
(1) 大手量販店の進出
・全国の小売業は長年にわたって個人商店の減少傾向が続いており、家具業界も例外ではなく、チェーン化された大手量販店の増加などにより中小の家具店は苦戦を強いられている。
・家具屋さんは仕入れ、在庫コストが大きく家賃や人件費が重荷になっている店舗が多い。
(2) 消費者の価値観が変化
・かって家具は「一生もの」、」「記念もの」として選ばれてきたが、現在の消費者は、価格・利便性・機能性を強く求める傾向に変わりつつある。
・家具そのものより「体験・暮らしの提案」を重視する動きが出ており、単に売るだけではなく「ライフスタイル提案」を行う店も出てきている。
(3) デジタル化・販売チャンネルの変化
・多くの消費者はオンラインで家具を探すようになり、ARのバーチャルショールーム(家具を部屋に置いたイメージを表示)、ECの強化が進んでいる。
・これらは、大手ブランドが先行しており、個人店が独自に追随するのは簡単なことではない。
2 「まちの家具屋さん」は「大手」とは戦わない!
大手ブランドの進出やデジタル化の時代に「まちの家具屋さん」がこれからも安定した経営を続けるための現実的な方向性はどのようなものがあるのでしょうか。
(1) 大型店、ECとは正面から戦わない
ニトリ、IKEA、Amazonと価格・品数・即納で勝つのは不可能です。
大手ができない、「まちの家具屋さん」の”強み”を生かしたお客さんに寄り添ったきめ細かなサービスと”売ったら終わり“ではないアフターケアを心掛けた売り方が必要です。
そのうえで、「まちの家具屋さんは」、大手が最も苦手とする次の領域でお客さん対応を行うのが得策です。
◆ 「売る」一辺倒ではなく、「暮らしの相談役」になる。
ただ売るだけではなく、お客さんの家具類にまつわる様々な相談や困りごとに対し、できる限りの対応を行います。
-大手の弱点ー
・店員は、商品説明が中心になる。
・顧客の生活背景までは踏み込まない
・担当者が固定されてない
「まちの家具屋さん」はお客さんが「この人に相談したい」という存在になることが大切です。
◇家具を売る前に必ず聞く
・家族構成
・住居のタイプ(持ち家・マンション、間取り)
・生活動態や困りごと
◇一式提案
・ダイニング+照明、敷物まで含めて一式提案
◇顧客別の担当者
・以前、購入された顧客にはその時の担当者を充てる
※お客さんは家具だけではなく、「自分の暮らしを分ってくれる人」から買うようになります。
◆「この町」、「この地域」に特化した品揃え、売り方をする。
それぞれの地域、まちに合う品揃え、売り方で大手との差別化を図ります。
-大手の弱点ー
・全国共通の商品、売り方
・地域の住宅事情を考慮しない
まちの家具屋さん」は、その地域の生活実態に特化した売り方、品揃えで対応します。
◇地域の住宅に合わせた品揃え
狭小住宅、平屋、団地、雪国対応など
◇地元工務店、不動産屋と連携
新築、引っ越し時に紹介してもらう
◇地域のイベントなどと連動
「新生活応援」、「模様替え相談会」など
※お客さんは「自分の家に会うか不安」を解決できるのは地元の店だけという意識を持つようになります。
◆ 売った後のアフターフォローを大切に
売って終わりではなく、そのあともお客さんのことを気遣う気配りを忘れないようにすることにより、お客さんは「またあの店に行こう」という関係性が生まれます。
-大手の弱点ー
・購入後は基本的に自己責任
・問い合わせはコールセンター
・微調整、相談に弱い
「まちの家具屋さん」は“売ったら終わり”にしないアフターフォローを行います。
◇「使ってみてどうですか?」の声掛け
◇がたつき調整、再設置などの無料、低価格での実施
◇買い替えや追加相談対応
(2) 大手に勝てるお客様を選ぶ
価格優先のお客さんは最初から大手に行くので、次のようなお客さんを選ぶのがいいでしょう。
① 始めて家具を買う若い家族
② 高齢者
③ 単身者
④ ネット購入に不安がある人 ⑤ 家具選びに失敗したくない人
3 「まちの家具屋さん」のこれからの経営スタイル
「まちの家具屋さん」は、大手大型店、ECとは一線を画した経営スタイルで臨むことが今後の安定した経営を支える柱となります。
(1) 「売る店」から「相談される店」になる
家具は、「モノ」より次のような日々の暮らしの悩みで選ばれることが多くあります。
・自分の部屋に合う家具がわからない
・高齢の親が使いやすい家具とは
・買った後のメンテナンスが不安
これらの悩みに対し、次のような提案をします。
・家具のコディネート提案
・採寸、設置、配置のアドバイス
・買い替え、修理の相談窓口
(2) 高い家具でも納得してもらえる理由を説明する
なぜこの家具がよいのかを店主の言葉で説明します。
・国産家具
・無垢材を使用
・本物の家具職人の手による家具
・長く使える修理が可能な家具
(3) ターゲットを絞る
ターゲットは、広い層ではなく、「まちの家具屋さん」にとってふさわしいと思われる次の層を狙います。
若者向けの激安家具を求める層は狙わない方が賢明です。
・50代から70代の地元住民
・持ち家の世帯
・親の介護、同居を考え始めた世代
4 まとめ
「まちの家具屋さん」の経営環境は大手量販店の進出、消費者の価値観の変化に加え、オンラインで家具を探す人も増え、日増しに厳しさを増しています。
そんな厳しい情勢下でこれからも安定した経営を続けるためには、大型店、ECとは同じ売り方をしないことが得策です。
大手量販店共通のアフターフォローのない「売って終わり」の画一的な経営に対し、「まちの家具屋さん」の買い手のこだわりや困りごとなどに寄り添った売り方を前面に出します。
「売る店」から「相談される店」に「売りっぱなし」を止めて売った後でもお客様が家具について「またあの店に聞こう」とという関係性を築くことが、今後も安定した経営のためにも必要なことです。

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