商店街の行き詰まり解消方法として、キャッシュレス化とデジタル化・DXへ運営方法を変換してゆかなければならないということをよく耳にします。
その流れを加速させようと経済産業省では、中小・小規模事業者が行う「IT導入支援事業」を補助対象事業として位置づけ、ポストコロナの状況に対応したビジネスモデルへの転換に向けて、業務の非対面化に取り組む事業者によるIT導入等を支援します。
また、これを受けて、それぞれの自治体においても、同様の趣旨から令和4年度から補助金制度の整備など独自の支援策を設ける準備を行っています。
キャッシュレス化についてはある程度の進展はあるものの、デジタル化、DXといってもおぼろげながらイメージはできるもの、商店街やまちの小売店に具体的にどのような手法で取り入れていったらよいのか全く手探りの状況です。
商店街やまちの小売店にとってのデジタル化、DXへの対応とはどのようなことなのかを現状に即した対応方法について下記にまとめてみました。
目次
1 デジタル化とDXは同じようなもの
デジタル化という言葉は氾濫しているが、DXは比較的新しく出てきた言葉であり、この両者の違いは何なのか確認します。
WEBサイトを検索してみると、
デジタル化とは
現在の業務を自動化・システム化し、業務効率化や生産性の向上を目的とする。
DXとは
デジタル技術でビジネスモデルそのものを変革して新たな価値を生み出し、企業の競争力を向上することを目的とする。
とありました。
まちの小売店を例に取って言えば
「デジタル化」とは、今まで手作業で手間暇かけて行っていた伝票整理、在庫管理、顧客情報の整理などをパソコンと専用のソフトを使い日常業務を効率的に行うということだろうか。
また、「DX」とは、デジタル化されたデータを集計・分析などに活用し、店の経営方法の改善、販路開拓、効率的な集客方法などを編み出すということになるのだろうか。
2デジタル化とDXに対応するにはどのような手法があるのか
商店街、業種別の組合、まちの小売店などがデジタル化・DXに対応するにはどのような手法があるのか、まず考えられるのは次の手法です。
- キャッシュレスへの対応
- Wi-Fi環境の整備
- 業務のオンライン化
- 作業のデジタル化
- ホームページの作成、リニューアル
- 専用アプリの制作
- ECサイトの立ち上げ
- デジタルサイネージの設置
(1) キャッシュレスへの対応
今やどなたでもクレジットカード1枚ぐらいは財布のどこかに入っている時代になりました。
諸外国に比べて日本はキャッシュレス化に関しては、後進国といわれ、国や自治体では様々な補助制度を設け、施策としてキャッシュレス化の推進に力を入れています。
カードやスマホなどの支払いは、現金支払いに迫るほどまでに普及してきました。
この背景にはコロナ禍による非接触に馴染んできたことやカードでしか決済できないオンラインショップの急激な普及があります。
これからはどのようなお店もキャッシュレスに対応していなければどんどんお客さんに見放されてゆきます。特に外国人観光客は現金決済を嫌います。
キャッシュレス決済は、専用の端末機で読み取ることで決済を行います。
したがって、お店にはお客様の要望に応じたキャッシュレス端末機の設置が必須になります。
また、お店にとって
- 外国人などインバウンド顧客の囲い込みができる
- レジなどの会計業務の効率が飛躍的に高まる。
- POSシステムとの連携で顧客情報の蓄積、分析ができ、経営の効率化が図れる。
などの大きな効果を生みます。
キャッシュレス端末機は、
・カードリーダーなどで直接読み込む「接触型」
・端末に直接触れなくてもカードやスマートフォンを近づけるだけで、近距離無線によ
って読み取る「非接触型」
・バーコードやQRコードを読み取って支払いをする「コード読み取り型」
に大別されます。
最近ではどのキャッシュレス方式であっても1台の端末機で対応できる「マルチ型端機」が出ており、スッキリしたレジ周りを確保できるようになります。
(2)Wi-Fi環境の整備
Wi-fiによる無線アクセスポイント設置することにより、もうこの頃ではどなたでも肌身離さず持っている地域特有の魅力を発信することができるのです。
これが商店街であれば、ここを訪れた観光客や近くにいる買い物客などに
・お店の広告
・商店街のイベント
・商店街の紹介
・近くの観光エリア
などの情報を発信することができます。
たまたま観光など来られた方々はここで得られた情報を口コミで後日、広めてくれることも期待できます。
商店街などへのWi-Fi環境の整備は、商店街など地域への集客・活性化にとても有効な方法です。
(3) オンライン化
商店街とそれを構成する各店舗をローカルのネットワークで結ぶことにより、様々な情報を共有することができます。
例えば、
・商店街の運営に関すること
・商店街のイベントなどに関すること
・個店間の情報交換
などがあります。
また、商店街とそれぞれの個店の希薄になりがちな関係が濃くなり、一体感が生まれ、商店街そのものの活性化にも役立てることができます。
(4) 作業のデジタル化
収支管理、在庫管理、顧客情報管理、各種伝票作成など、従来から手作業で行ってきたものをデータで管理するようにすれば、日常業務の効率化が一気に上がります。
例えば、表計算ソフトを使えば日々のデータを入力するだけで、その時点々での集計を出すことができ、必要な検索・抽出・集計も思いのまま行うことができます。さらにデータベースソフトを使いこなすことができれば高度な分析なども行うことができます。
これまで、手作業で多くの時間を割いていたこれらの日常業務をデジタル化することにより、業務の効率化はもとより、今まで見えていなかった経営上の課題・問題点なども見えてくるようになります。
(5) ホームページの作成、リニューアル
商店街や業種別組合と一般消費者を繋ぐのがホームページです。
大変きれいで垢抜けたホームページを見受けますが、気になるのが名刺がわりのようなホームページになっていることです。
商店街や組合などの概要、連絡先、加盟店舗一覧などで、目新しい情報がなく、何年か前に専門業者に委託してそれっきり更新されていないのです。
情報は生もので、見る人は常に新鮮な情報を求めています。
ホームページを常に新鮮なものに保つにはそれなりに費用がかかります。
できれば費用をかけずに自前で更新してゆきたいものです。
それには、作成時の専門業者にお願いし、記事の更新方法マニュアルを用意してもらい、組合員が日々更新できるようなホームページにする必要があります。
(6) 専用アプリの制作
スマホ時代を活用し、地域魅力発信のための次のアプリを開発します。
・近所の観光スポット、注目店舗などの情報を発信し、GPS機能を使い、訪れた人がス
ポットに近づいた時に自動的に案内が流れるような仕掛け
・イベントの情報
・お得なクーポンのお届け
・特典付きのスタンプ発行
などがあります。
これらは、商店街など地域と訪れた人とが一緒に盛り上がるためのツールになります。
(8) ECサイト制作
商店街、業種別組合が独自のECサイトを構築します。
ECサイトには楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングなどのモール型や比較的簡単に独自のネットショップを立ち上げることができるASP型があるが、ここでは商店街や業種別組合が独自でネットショップを構築することを意味します。
ネットショップを立ち上げるには高いスキルと費用が必要なイメージがありますが、独自のドメインを取得する必要ですが、最近では商店街などでも簡単に立ち上げができるパッケージソフトやサービスが増えてきており、比較的簡単に立ち上げられるようになりました。
商店街や業種別組合は傘下のお店に呼びかけ、それぞれの選りすぐりの商品を出品することにより、特に商店街においては、多彩なな出品商品により既存のサイトとは一味違うECサイトの構築・運営を行うことができます。
(9) デジタルサイネージの設置
デジタルサイネージとは、あらゆる場所で、ディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信する技術のことです。
商店街などでは、要所に何箇所か設置し、常に最新の情報を配信すれば訪れた人の注目度は上がり、宣伝効果が高まります。
遠隔操作でいつでも情報の更新が可能で、従来のポスターや看板の様に取り替えの手間がかかりません。
表示する内容は、
・商店街各店舗のCM
・商店街イベント情報
・季節セール、年末、年始セール
・天気予報
・行政情報・地域情報・防災情報、交通安全週間
・タウンニュース
・さまざまな商品・サービスの情報
などを表示します。
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3 まとめ
まちの小売店はこれまでのように同じ商品を同じ売り方をしていてもお客さんは離れてゆくばかりで、商店街の衰退が加速してしまう時代になりました。
国や各自治体でも商店街、商業団体等に対するキャッシュレスとデジタル・DXに関して、施策としてこれらの一層の推進を掲げています。この機会に、商店街や業種別組合は、キャッシュレス化の全店採用とネット設備をフル装備した環境を整え、傘下の個店とともに時代にあった経営方法へ方向転換し、より一層の集客効果を高める事業にチャレンジする時期でもあります。
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